介護士による高齢者虐待がニュースになることがあります。
このことについて岡山県の特養で22人の職員が虐待をしていたというニュースをもとに現役介護士のボクが個人的に思っていることを書きます。
概要は下記のとおりです。
岡山県勝央町美野の特別養護老人ホーム・南光荘で20人を超える職員が複数の入所者に対する虐待を繰り返し、4人が解雇されていたことが6日、施設側への取材で分かった。町は施設から聞き取りをして虐待があったと断定。報告を受けた県が近く調査に入る。
今回は上記の事例を通して虐待についてボクが思うことを書きます。
完全にボク個人の考えなので、一介護士の意見として受け取ってもらえれば幸いです。
実際に起こった高齢者虐待について現役介護士が思うこと
今回も虐待が起こった事実だけが報道され、背景については語られませんでした。
ぶっちゃけ、この報道の仕方には正直腹が立っています。
もちろん虐待がやってはいけないことと認識したうえでの感情です。そこで、ボクが焦点を当てたいのが下記です。
なぜ虐待が起きたのか?
ボクが気になるのはこの一点のみです。
なぜかというと「職員は虐待はしてはいけないもの」という理解はしているはずだからです。
まず虐待は起こってはいけないというのは大前提。これは職員側も利用者側も共通認識としてあるはずです。
問題なのは、認識しているにも関わらず虐待が起こってしまうという事実とその背景です。
「解雇された4人が不当解雇として裁判所に労働審判を申し立てている」というのがボクには引っかかったから。
今回の報道も含め高齢者虐待のニュースは背景は報道されないことが多いです。ボクはこの背景こそが虐待を減らすカギになると思っています。
どんな虐待が起こったのか?
どのような虐待が起こったかは下記のとおりです。
- 決められた分量の食事を与えなかった
- 部屋から出られなくした
- 腹部をひもで強く縛る
腹部をひもで強く縛る行為に関しては「入所者が自分でおしめを脱がないようにするための指示だった」とのこと。
ネット上の声
オムツ取ったらどうなるか。
介護経験ある人ならわかると思います。
なんでもかんでも虐待で片付けたら面倒見る人いなくなりますよ。それだけ手のかかる家で面倒見きれない老人がたくさんいる。
色々工夫すれば虐待と言われる。汚い仕事、この先介護職に付く人いなくなりそうですね。
時と場合、やり方にもよるが、同業者からみれば今の人数配置や降りてくる点数、職員への給料を考えれば限界がある。
国はもっと医療や介護に目を向けて対応してほしい思う。あと、施設に預ける側もモンスターペアレントみたいな家族もいて、自分の思い通りにいかなくて苦情ばかり言うなら家で自分で診てやってくれと思う。
むちゃくちゃ言ってくる家族側から施設側を守る法律も作ってほしいです。
様々な意見がありますが、みんな本質は一緒で必ずそうなった背景があるってことです。もちろんボク自身もそう思っています。
だからこそ、起こった表面上の事実だけが報道されるのに疑問を感じています。
虐待が起こった背景は?
ボクが気になったのが下記の3つ。
- 施設がどんな環境なのか?
- 入所者自身の問題はないのか?
- 身体拘束禁止の規定自体に無理があるのでは?
順に解説します。
施設がどんな環境なのか?
今回の特養がどんな施設だったのか気になりHPを見てみました。
造りを見るかぎり従来型の特養です。
どのような人員配置なのかがわからないのでなんとも言えませんが、死角の多い介護士にとっては介護しやすい環境ではないように感じました。
もちろんその他の施設でも似たようなところはたくさんあります。ボクが以前勤めていた施設も従来型の多床室で、死角も多くとても仕事がしづらい環境でした。
そんな環境の中で認知症のある高齢者が多数いれば対応を難しくなるのは想像しやすいですね。もしかしたら入所者を危険から守るために仕方なくやっていたという可能性もあります。
入所者自身の問題はないのか?
一年以上拘束を続けてしまうのにはそれ以外に方法がなかったことも考えられます。
- 他者を傷つける
- 異食
- 転倒
上記以外にも考えられますがこのような背景もあったんじゃないでしょうか?
わかってるなら未然に防げるんじゃ?って声もあるかもですが、何十人と介護しながら常に観察し続けることは不可能です。
こういった観察が追い付かないくらいの原因があったのかとも考えられます。
職員自身の行動は変えられても、利用者本人の行動は簡単には変えられません。
解明しきれてない認知症の症状ってこともありますが、本人の行動をコントロールしようとすること自体が行動抑制と言われかねませんからね。
現在認知症の治療自体が確立されていないので、正直ケアだけでは苦しいのが事実です。
抑制系の薬の力を借りることも必要だとボク自身は思ってますし、実際にそうすることもあります。(医師と相談しながら最終的に減量していくことが前提)
それすらよく思われないことも数多くあります。いろいろな工夫を制限されて、どうやって介護していけばいいのかわからなくなるのが正直なところです。
身体拘束禁止の規定自体に無理があるのでは?
ボクはこれを強く感じています。内容自体を否定するわけじゃありません。定義していないとなくならないですからね。
この取り組みをご家族を主とした利用者側にも知っておいてほしいということです。
なぜかというと、人間の目だけで見るとなると事故などのリスクが上がるからです。
リスクが上がることを理解してほしい。
すべて目が行き届いていれば起こることがない事故も多いです。でもすべてに目を行き届かせることが介護現場では不可能なんです。
ボクは身体拘束をすすめるつもりは1ミリもありません。身体拘束をしないことによるリスクの増加を理解してほしいだけです。
転倒が起こったときの例

ボク自身もこんな苦情を受けたことがあります。入居時に転倒はすべて防げないことを伝え、同意を得たうえで入居してもらったにもかかわらずです。
身体拘束をしてしまう背景にはこういったことを恐れてしまうのも要因としてあげられるんじゃないかと。
まとめ
今回の虐待のニュースは世間では、また介護士の虐待か・・・。
こんなふうに感じている人も多いかもしれません。
虐待しようと思って介護の仕事をする人は一人もいません。
なのに、こんな事件が起こってしまう背景に目を向けてもらえない。
もしかしたら人員不足がなければこんなことも起こらないかもしれません。人員に余裕ができれば工夫の幅も広がります。

介護士はやっぱりこんな事件を引き起こすのね
こんなふうに思わせるための報道の仕方だけはやめてほしい。
すべてを介護士の資質のせいにするような報道は・・・。
介護業界に前向きに飛び込んでくれる人が減るんじゃないかと思ってしまいます。
もちろん理由はどうあれ虐待はダメです。虐待をしてしまった職員はまず反省すべきです。
そして今回の件でボクを含めた介護士はもう一度自分自身のケアのあり方、働き方を振り返り考えないといけません。
ボク自身、自分たちに何ができるのか?どんな行動をとるべきなのかを考えるきっかけになりました。
虐待が起こる背景が明らかにならないと虐待はなくならない、、、そう思ってます。
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